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zoom RSS 事業仕分け作業の横暴 漢方の保険給付はずし/行政刷新会議 財務省

<<   作成日時 : 2009/11/23 05:08   >>

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▽ 行政刷新会議事業仕分け作業の横暴 ▽
   漢方の保険給付はずし

慶應義塾大学医学部漢方医学センター
センター長 渡辺賢治
         2009年11月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
                 http://medg.jp

画像 11月11日(水)の行政刷新会議事業仕分け作業の結果を聞いて愕然とした。一般用薬類似医薬品(OTC類似薬)を保険給付からはずすというのである。
 この議論は長年自民党政権時代に政府ならびに財務省が再三提案しては消えた案件である。
 平成9年7月11日に与党協議長の丹羽雄哉氏が、都内の講演会でOTC類似薬の保険給付除外について述べている。OTC類似薬の例として、漢方、ビタミン、湿布薬を挙げている。
 2006のNikkei Newsによると、政府・自民党は市販薬と類似する医薬品(例:かぜ薬など)を医療機関が処方した場合、公的医療保険を適用せず、全額患者の自己負担とする方向で検討に入ったと報じている。
 2007年1月、財務省理財局の向井治紀国有財産企画課長が日本漢方生薬製剤協会の講演会で、「財政からみた薬剤を中心とした医療」をテーマに講演し、保険医療費が伸びている以上、抑制するための動きは必須で、保険給付の制限論議では「ターゲットになりやすいのは薬」であり、OTC類似薬が給付除外対象となる可能性について述べている。
 財務省の財政制度等審議会は、2008年度予算編成に関する建議をまとめた際にも、後発医薬品のある先発医薬品(いわゆる長期収載品)やOTC類似薬の保険給付の見直しを検討することも求め、OTC類似医療用医薬品の保険給付除外は、その例として挙げられていた。
 このようにOTC類似薬の動きは、出てきてはおさまりといった状態であった。今回の行政刷新会議事業仕分けの財務省案は、こうした長年の財務省の案を反映させたものと思われる。
 しかし、この財務省案が如何に現実を無視したものかについて述べたい。

●医師が漢方を用いる意義
 この案に医療のことを仕分けしたワーキング・グループの15人のうち、11人が賛成したというのであるから驚いた。そもそも漢方・ビタミン・湿布薬と一緒くたにされている点に非常に違和感を感じる。
 漢方の臨床を身につけるためにどれくらいの時間を要するとお考えであろうか。卒前教育は中国の5年間、韓国の6年間とは言わないまでも、2001年の文部科学省の作成した医学教育モデル・コア・カリキュラムに入ったことで、今では80すべての医学部・医科大学において漢方教育がなされている。卒業後、漢方専門医は、日本専門医制評価認定機構に加入している専門医制度であり、内科・外科等の基本領域の専門医を取得した後、漢方専門の研修3年が義務付けられている。
 漢方医学がセルフ・メディケーションで済むと思っていたら大間違いで、高度の医療知識を必要とする医学体系であり、当然誤用による副作用があり得る。自然のものであるから副作用がないと思われているかもしれないが、慶應での調査では、胃腸障害をはじめとして17%の患者が副作用を経験している。漢方の専門家ですらその有様であり、漢方の専門医でなければなおさらのこと、セルフ・メディケーションではさらに増えることが予想される。重篤な副作用として肝障害と間質性肺炎があり、セルフ・メディケーションでは発見が遅れ、危険な状態になることも考えられる。

●医師ライセンスが一つであることのわが国の強み
 中国、韓国、台湾などは西洋医学の医師ライセンスと伝統医学の医師ライセンスの二つに分かれており、中国などで病院が一つでも入口が異なり、医療の導線そのものが分かれていることはよく知られている。
 わが国においては一つの医師ライセンスのもと、西洋医学も漢方医学もできる、という点に特長がある。私の恩師の大塚恭男が常々言っていた言葉に「一人の患者を西洋医学の医師と東洋医学の医師が診ても1+1は2にしかならない。一つの頭に東西両医学があると1+1が3にも4にもなる。」
 漢方医学を保険給付からはずし、医師の手から離すということは、日本の一番の強みを否定することになる。
 慶應の漢方クリニックにもありとあらゆる患者が来る。総合医的な役割で、ここで膠原病を見つけたり、脳腫瘍を見つけたりすることが多々ある。診断には血液検査、尿検査はもとより内視鏡検査、MRI、CTなどありとあらゆる検査が可能である。もしも医師の手から離れたら、漢方薬で愁訴をごまかしているうちに発見が遅れることにもつながりかねない。全国でも漢方を専門とする医師はほとんどが総合医的な役割をしているのである。
 漢方を専門としないまでもありとあらゆる診療領域に漢方治療が拡がっている中で、医師の手から奪い去ることは、医療の幅を狭めることになりかねない。

●世界的には医療の本流に入りつつある漢方医学
 財務省のアイデアは10年以上前のものであるが、最近の世界の動向を知っているのであろうか?世界中で伝統医学の見直しが行われていることをご存知なのであろうか?
 伝統医学を含む補完・代替医療の大きな潮流は1990年代から始まっているが、NIHの年間予算はこの領域に300億円を超えている。NIH内には、1998年から国立補完・代替医療センターというのがあるが、一番大きな予算は実はがんセンターである。MDアンダーソン、ダナ・ファーバーなど米国の主要ながんセンターには補完・代替医療のセンターがあり、鍼灸治療を中心に伝統医療が取り入れられている。
 補完・代替医療といってもさまざまであるが、伝統医学はWhole MedicalSystemsという位置づけで、体系だった医療というのがNIHの認識である。
 2009年10月のWHO国際分類ファミリー年次総会の席で、ICD(国際疾病分類)次回改訂に漢方を含む伝統医学を取りこむ計画が話された。ICDは世界保健の基礎となっている統計の基盤であり、わが国でも死因統計、保険請求などに用いられている。
 ICDは医師の行う医療の統計である。漢方を医師の手から引き離すことは、世界の潮流と全く逆の方向に進むものである。

●漢方を医療資源として活用することで効率の良い医療を
 大腸がんの術後大建中湯の使用により、在院日数が軽減される、というデータもあり、術後のクリニカル・パスに入っている病院もある。漢方を利用することで効率の良い医療ができ、結果医療費の削減にもつながる例には事欠かない。
 目先の財源のために漢方を切ることの愚に早く気がついて欲しい。医療用漢方製剤の市場は1000億円である。医薬品費全体の1%強である。しかし医療におけるインパクトは強い。目先の財源確保のために、この国が大きなものを失うような愚は避けるべきである。
 15年前に漢方の保険給付はずしの話が出た時に、日本東洋医学会が国民から集めた署名は150万通である。またそれをやるのかと思うとうんざりするが、何よりも国民に恨みを買うような政策は避けてほしい。

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厚労相、漢方は保険適用外「問題ある」
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4295655.html
画像 行政刷新会議の事業仕分けで、漢方薬を保険適用から除外するべきとされたことについて、長妻厚生労働大臣は「問題がある」として、事業仕分けの結果を受け入れない姿勢を示しました。
 「漢方薬についても市販の物を買って保険から外しなさいと、こういうようなご指摘もあると聞いているが、そのまま受け入れるというのはなかなか難しい」(長妻 昭 厚労相)
 事業仕分けでは、薬局で類似薬などが市販されている漢方薬は、医師が処方する保険適用から除外するべきとされましたが、長妻大臣は29日、結果を受け入れない姿勢を示しました。
 一方、将来、最低年金を保障するためには、「消費税を上げる時期が来る」と述べ、増税の必要性を示しました。(29日13:34)

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診療報酬総額 引き下げを/財務副大臣
http://kurie.at.webry.info/200911/article_27.html
インフルエンザに効く漢方薬 逆ザヤで供給不安説/麻黄湯
http://kurie.at.webry.info/200911/article_5.html

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